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【アムトラック 鉄道旅】38時間!ロッキー山脈を駆けるEmpire Builder シアトル〜ミネアポリスの旅(乗車記編)

Amtrakの8番9番列車Empire Builder号は、西海岸の主要都市シアトルとポートランドから中西部の大都市シカゴまでを46時間かけて走破する、アメリカ有数の長大路線です。

2024年3月、大学の春休みを利用して、この列車のCoach Class(座席車)に乗車し、シアトルからミネアポリスセントポールまで移動してきました!この時の様子をお届けします。

シアトルから中西部の主要都市ミネアポリスセントポールへの所要時間はなんと38時間!

 

(この記事は乗車記になります!見どころやサービスは、こちらの紹介ページをご覧ください)

cod2224.hatenablog.com

乗車

シアトルの主要駅はキングストリートステーション、20世紀の頭に建てられた風格ある駅舎です。建物が二つに分かれており、真ん中の低くなったところにホームがあります。どちらに入ればいいのか戸惑いましたが、海側の建物(写真の右側)で正解だったみたい。

 

脇の階段からホームの高さまで下りたところが入り口で、中に入るとこんな感じ、

 

Amtrakのターミナル駅としては比較的こじんまりしたサイズで、案内の人も少なめでした。ちょうど、バスの出発時刻とも重なって賑わっていました。建物に入る時に警備の人に、「バスの乗客ですか」と聞かれるぐらいにはEmpire Builderの乗客は少なめです。過去の経験では、Amtrakは発車30分前ぐらいから目的地別に列ができるのですが、20分前についた時にはまとまった列も見られずのんびりとした感じです。

 

シアトルやポートランドからワシントン州の北部の都市ヴァンクーバー(アメリカの方)を結ぶAmtrak Cascadeも止まっていました、レトロな外観が可愛い。

 

乗車開始の時間は記録していませんが発車の10分前ぐらいでしょうか。個室のお客さんが案内されて、最後が座席車(Coach Class)です。普通は目的地ごとにグループに分けられて違う車両が割り当てられるのですが、なんとこのEmpire Builderには座席車両が1両しかありませんでした。始発駅からの乗車は5分前を過ぎると乗車が締め切られることがあるので注意です。

 

海沿いを走る

シアトルを定刻より1分早く発車、セントポールまで37.5時間の旅が始まりました。この記事もブログも長くなりますがお付き合いください。

列車はシアトルの地下を抜けてエリオット湾に出ます。スタバの1号店が有名なパイクプレイスマーケットは地下で通りすぎてしまいました。しばらく沿岸に沿って走ります。基本的には進行方向左側、海側、カナダ側の席が良さそうです。

 

後ろには途中のSpokaneでポートランドから来た車両を併結するため、この区間では後面展望を楽しめます。カフェカーはPortland発の方に併結されているため、初日はカフェ、ラウンジは使用できません。初日の夕飯は持ち込みを推奨します。(隣のダイニングカーでも食べられるみたいですが、基本は個室の乗客のサービスなので詳細はわかりません。)

 

一旦内陸に入ります。軍事施設のようなものを発見、軍事車両も鉄道で運ぶのでしょう。(…写真は念の為割愛します…)

 

古い鉄橋を渡り再び沿岸にでます。右手にはハイラムMチッテンデン水門(?)、ダムみたいです。この先はかなり風光明媚、海(といっても入江ですが)スレスレを走ります。

 

難破船のようなものが朽ち果てている。

 

ロッキー山脈へ

大きく右にカーブして最初の停車駅Everett駅に入ります。カーブ手前右側に旧駅のようなものが見えた気がしますが、現役の駅舎の方が古そうです。多数の乗車があるので席を空けるようにとアナウンスが入りましたが、隣には誰も来ず。相席はあまりなさそうです。乗車率は窓側が全て埋まる5割ほど。

Amtrakでは目的地を書いた紙切れを座席の上に挟むのですが、これを見る限り、ワシントン州内完結の短距離客と、ミネソタやシカゴまで行く超長距離客の二極化が激しいようです。

 

海を離れると、日が暮れるにつれて山に入っていきます。ここまで同じ線路を共有していた近距離通勤列車Sounderともお別れです。

 

Harvey Field飛行場。

 

山がちになるにつれて陽はいよいよ傾き、車窓は暗くなっていきます。鳥が群れをなして飛ぶのもなにか寂しさを感じさせます。穀物畑の先に見える街の明かりが行き先を照らします。

 

トイレに行ってみました。トイレは階下にあります。着替えスペースの壁やオレンジのアクセントがレトロです。一階席は結構混んでいます。2階席は景色はいいですが狭い階段を荷物を持って上がらなければいけないので需要はありそうです。8席しかないのに予約段階で指定しなければいけないので、混雑は運次第。

 

この辺り、街と街の間は基本的に圏外になります。また、充電コンセントは窓側についているので、長旅では窓側席を取りたいところ。外が完全に暗くなってからが険しい山なのでしょう。列車は左右に大きく揺れます。Leavenworthにつくと久々の街あかりにほっとします。

 

この辺りのお家はかなり電飾に手を入れているみたいです。しばらく電波が入る区間です。

 

Wenatchee、コロンビア川の両側に町が広がり、川に映る夜景が綺麗です。地図を見る限り対岸に渡る橋は一つしかないようですが不便ではないのでしょうか…数人が下車しほぼ同数が乗車、相変わらず5割程度の乗車率。この駅を出ると車内は減灯し就寝モードになります。時刻はまだ21時、青い通路等のみを残して消灯。読書等はまだ使えます。しばらくはコロンビア川と並走、車内が暗くなってからの方が外の街あかりは綺麗です。ロックアイランドの街(駅はない)を過ぎたあたりで立派な水門と工場をみました。

 

次のEphrata到着放送が、「おやすみ放送」。22時から7時はQuiet Timeになるということで「Good Evening」の挨拶とともに放送での案内を終了します。この先、Sponkaneで1時間ほどの停車があり、後ろにPortland発のEmpire Builderが連結されるはずですが、早々寝てしまいまいました。

 

目が覚めると外はすでに明るくなりかけており、銀世界!。行方向左の山並みが朝日を浴びて朱色に染まります。腕時計は5時半を指していましたが、すでに山岳部標準時間に切り替わっているので6時半です。

 

白身魚のような駅でしばしの停車

 

ロッキー越えはいよいよ佳境です。列車は川の上に平地を探すようにして走ります。強烈な朝日を浴びて川の水面からは湯気が上るのが美しい。朝の長い影が雪に白黒のコントラストをなすのも素敵です。おもむろにカメラを取り出す私。

並行する道路の交通量はまばらになり、険しい自然を悠然と駆ける列車には頼もしさを感じます。

シアトルから乗った乗客はほとんどが降りてしまい、乗車率は4割程度、途中から乗ってくる客の服装もすっかり山男、山女といった出立ち。West Glacierから休止駅East Glacierの間はGlacier国立公園。人家もまばらなEssexでスキーヤーが一人下車、雪に閉ざされた国立公園に入っていくのでしょうか。

 

大平原

East Glaccier Parkを過ぎるあたりで景色はロッキー山脈からグレートプレーンズの大平原へと変化します。見渡す限りの大平原。この辺りは先住民のリザベーションになっているようです。

リザベーションのどまんなか、Browningは意外と大きな町に見えますが、人口はわずか1000人、感覚が麻痺してきました。だだっぴろい平原に突然家がひしめき合っているのが可愛い。

 

列車は再び平原へ。とはいえ鉄道はGreat Northenの系譜を引く大幹線、貨物列車は多いですね。雪原は山の向こう、カナダまで続きます。二日目はずっとこんな感じの景色です。

 

コーンや小麦の栽培、放牧のほか、風力発電に使われているらしく、石油も埋まっているようです。街の近くを中心に巨大な穀物の貯蔵施設があり、長編成の貨物列車が入れるようになっています。

 

Shlby、Harveと中規模の町が続きます。いずれも車外に降りることができ、ホームでタバコを吸う人も多め。階下の席はガラガラになっていました。乗車率は依然4割ほど、気づくと女性の一人利用も多いですね。Amtrakは治安いいような気がします。価格面でバスはもちろん飛行機にも負けることが珍しくないので…所々、駅舎や保存車両にGreat Northernの文字がみられます。Great Northern鉄道といえば、かつては日本郵船と提携してシカゴーシアトルー横浜を結んだ路線、歴史を感じます。

 

広大な平原は、グレートプレーンズからプレーリーと呼ばれるエリアに入りますが(境界はよくわらなかったです)、しばらく続きます。Harveから先は特に小麦の貯蔵施設が多い。貨物列車を2本連続で退避することも。雪はだいぶ薄くなりました。この辺り、意外にも携帯の電波は入る。

 

結局大平原の景色を見ながら日が暮れてしまいました。早朝の山岳区間とは打って変わって非常に変化の少ない車窓でした。すでに24時間列車に乗り続けているので、腰に若干の痛みを覚えます。それよりシャワーを丸二日以上浴びていないのが心理的にきつい…(個室客にはシャワーあります)。

 

20時30分ごろ、何もない単線区間で長時間停車。ブレーキ試験のような動きを見せたので不調を疑いましたが20分ほどしてなにもなかったかのように運転再開。貨物列車による信号停車でしょうか。しばらく徐行したのち、急にスピードアップ。最高速度はサンダーバードもびっくりの130km/h!流石の標準軌といえど車内は小刻みに振動します。これがこの日のクライマックス。遅れを取り戻すのかと思いきや…

 

Minotには10分も早着しました。ダイヤ管理どうなってんだろ…ここら辺で時刻は中部標準時に切り替わります。放送ではいちいち案内してくれないので注意。この駅で1時間も停車します。なんのために急いだのやら…この間に貨物列車2本に追い抜かれました。追い抜きは初ですが、そもそもアメリカでは貨物会社の線路を借りて旅客列車が走っているので、貨物の方が主役です。私は退屈して寝てしまいました。

 

ところで、Amtrakの座席は体感としては、座席車のなかではかなり快適な部類だと思っています。特に日本の夜行バスに慣れている身としては長時間乗車は全く苦になりません。相席にならなければ、2席使ってレッグレスとをあげれば、あぐらで座ることも、丸くなって寝ることもできるスペースです。さすがアメリカ、何もかも大きい。

 

ミネアポリスセントポール

さて、目が覚めるとすでに時刻は7時半、外は明るく、車窓は見慣れた住宅や工場が並ぶ景色。すでにミネソタ州に入っています。右手には大河ミシシッピ川が時折顔を見せます。一駅手前セントクラウドのあたりから並走しているはずですが寝ていて気づきませんでした。

 

定刻通り運転している模様。ミネアポリスが近づくにつれて大規模な貨物列車の施設も多くなり必然徐行も増えます。遠くに見えるミネアポリスダウンタウンは久々に見る都会といった感じ。この路線、超長距離ながらシアトルからミネアポリスの間には都市と言える都市はひとつもなく、高層ビルを見るのも2日ぶりです。(写真は別の時に撮ったものですが、ここを通ります)

 

とはいえミネアポリスには駅はないので素通り。デルタ線付近で右手には、かつてこちらも西海岸とシカゴを結んだMilwaukee Roadの保存車両が留置されています

 

少し行くと右手にはミネソタ大学の巨大なスポーツ施設群。

 

貨物施設が続きます。こちらはかつてのMidway 駅。セントポールの駅が再オープンするまでは、ここが、ミネアポリスセントポールの旅客列車の駅でした。

ミシシッピ川と並走するようになると、セントポールユニオンデポットはすぐです。

ほぼ定刻通りセントポールに到着。冬晴れの空のもとAmtrakを真ん中にして南にミシシッピ、北にはダウンタウンが映えます。

ここで多くのお客さんがおりますが、それ以上のお客さんが乗ってくるようです。ホームの入り口には長蛇の列が。駅ではイベントかなにかあるのでしょうか、警備の人が数多く立っていますが、制服はHomeland Security…謎です。

 

列車は30分ほど停車したのちさらに東を目指します。私はここからミネアポリスに戻るので、駅前の路面電車にのりました。所要時間は40分ほど。わざわざ鉄道で通り過ぎた街に戻るので、ちょっと馬鹿馬鹿しいような気もします…

 

Empire Builderの予約方法や設備については次の記事でご紹介します!Empire Builderを使った旅を計画している方はこちらもご覧ください!

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